日本人のふるさとを訪ねて

chiaki50612008-11-13

最近日が暮れるのがめっきり早くなったなぁ・・

と思います。

日に日に寒さが増しますし、

北海道では雪の日もあるようですね。

紅葉も随分南下してきました。

今回は、日本の美しい四季を描いた作家

川端康成に焦点を当ててみようと思います。



川端康成」と聞いて、思い浮かぶ作品はなんでしょうか?

人それぞれ違うかもしれませんが、

『雪国』と『伊豆の踊り子

のような気がします。

どちらの作品も中学・高校の推薦図書になっていたり、

国語の文学史の試験に出題されたりして、

否応なく憶えさせられた(!?)方も

多いと思います。

川端康成は大正末期から昭和初期にかけて新しい文学

の創造を目指し、新感覚派運動を推進した。」

などという言葉も一緒に丸暗記しましたね(笑)

ええ、わたしもその当時わけもわからず憶えました(笑)

そうなんです、川端康成は哀愁漂う、みずみずしく繊細な感覚で

独特な世界を創り出した作家なんですね。



では、前置きはこれぐらいにして、作品を見てゆきましょう。

まずは、川端康成の初期の頃の作品で、

伊豆の踊り子』(新潮文庫)。

伊豆の踊子 (新潮文庫)

伊豆の踊子 (新潮文庫)

これは、川端が十九歳の時に初めて伊豆に旅行したときの体験を

元に、旅芸人との清純な恋愛感情と旅情とを美しく描いています。

三十年ぐらい前に、山口百恵さんと三浦友和さんの主演で

映画化されていますよね。これがお二人の馴れ初めだったとか。

小説はとても短くて読みやすく、読後甘酸っぱい気分に浸れます。

若い人にも読んでもらいたいですが、大人になってから

再読するのもいいかもしれませんね。

他におススメなのが、『雪国』『千羽鶴』『古都』『眠れる美女』。

(すべて新潮文庫

雪国 (新潮文庫)

雪国 (新潮文庫)

古都 (新潮文庫)

古都 (新潮文庫)

眠れる美女 (新潮文庫)

眠れる美女 (新潮文庫)

川端康成を代表する文学と言えるこれらは、

どれも叙情性豊かな作品です。

『雪国』は越後湯沢の風物を背景に、主人公島村の目から

二人の女性の姿を美しく描いています。

わたくしから見ると、主人公島村はだらしなくて

全然かっこよくないのですが(笑)、

それとは対照的に芸者の駒子と葉子は麗しい。

後の『千羽鶴』や『古都』にも共通して言えますが、

川端康成は女性の愛らしさ、愚かさ、優しさ、哀しさを

見事な筆で描ききっています。

千羽鶴』は女性の業と悲しみを扱った作品。

幻想的な感じで退廃的なムードが漂っています。

『古都』は京都を舞台にした作品。

双子の姉妹を軸に、京都の四季の移り変わりや行事などを

織り込んだもの。二人の姉妹が境遇の違いから

上手くやってゆけないことを悟るところも切ないです。

眠れる美女』はちょっと「エロ」くて「変態」な文学(笑)

なにせ主人公の老人の名は、『江口』。

これって、「エロ」と読めません?

川端が茶目っ気のあった人物であることが伺えます。


また、川端康成は優れた批評家でもあり、

新人発掘の才能があったようです。

芥川賞の選考には創設当時から亡くなるまで携わっており、

三島由紀夫などを見出したのは彼だと言われています。


他にはちょっと変わりどころ(!?)で

『浅草紅団・浅草祭』(講談社文芸文庫

なども面白いかもしれません。

浅草紅団・浅草祭 (講談社文芸文庫)

浅草紅団・浅草祭 (講談社文芸文庫)

こちらは、川端康成が高校生の時に馴染んだ浅草の風俗を

ルポルタージュ風に書き上げた作品です。

『雪国』やその他の抒情小説を書く前に描かれたもので、

川端康成の「中期」の作品と言えるかもしれませんね。


川端康成の文学は、全般的にとても読みやすい文体だと

思います。

すっと頭に入ってきて、こころの琴線に触れる。

他にも沢山の作品を残していますが、

どれにも共通して言えるのはこのことではないでしょうか。

そして、どの作品にも「虚しさ」が漂っている。

これは、川端が肉親の縁に薄かったところから

きているのかもしれませんね。



話は少し変わりますが、

川端康成の本の表装の絵を多く描いている画家は誰か

ご存じですか?

有名なので知っている方も多いと思います。

そうですね、東山魁夷です。

わたくしは個人的にこの方の絵が大好きなんです。

川端康成東山魁夷が交友があり、

往復の書簡集も出版されています。

川端康成東山魁夷ー響きあう美の世界』(求龍堂)。

川端康成と東山魁夷―響きあう美の世界

川端康成と東山魁夷―響きあう美の世界

もし、よろしければこちらもご覧になってみて下さい。

わたくし個人では、もう現在絶版になっているのですが、

新潮文庫から出ている「東山魁夷小画集」のシリーズが好きです。

東山魁夷のことばが散りばめられた珠玉の一品で、

眠る前の布団で眺めたい画集なんです。

今は、古本屋さんでしか手に入れられないのかなぁ・・

残念(TT)



いかがだったでしょうか。

ノーベル賞作家というととっつきにくそうなイメージが

ありますが、それは払拭されたのではないでしょうか?

是非是非、手にとって見て下さいね!