日本人のふるさとを訪ねて

chiaki50612008-11-13

最近日が暮れるのがめっきり早くなったなぁ・・

と思います。

日に日に寒さが増しますし、

北海道では雪の日もあるようですね。

紅葉も随分南下してきました。

今回は、日本の美しい四季を描いた作家

川端康成に焦点を当ててみようと思います。



川端康成」と聞いて、思い浮かぶ作品はなんでしょうか?

人それぞれ違うかもしれませんが、

『雪国』と『伊豆の踊り子

のような気がします。

どちらの作品も中学・高校の推薦図書になっていたり、

国語の文学史の試験に出題されたりして、

否応なく憶えさせられた(!?)方も

多いと思います。

川端康成は大正末期から昭和初期にかけて新しい文学

の創造を目指し、新感覚派運動を推進した。」

などという言葉も一緒に丸暗記しましたね(笑)

ええ、わたしもその当時わけもわからず憶えました(笑)

そうなんです、川端康成は哀愁漂う、みずみずしく繊細な感覚で

独特な世界を創り出した作家なんですね。



では、前置きはこれぐらいにして、作品を見てゆきましょう。

まずは、川端康成の初期の頃の作品で、

伊豆の踊り子』(新潮文庫)。

伊豆の踊子 (新潮文庫)

伊豆の踊子 (新潮文庫)

これは、川端が十九歳の時に初めて伊豆に旅行したときの体験を

元に、旅芸人との清純な恋愛感情と旅情とを美しく描いています。

三十年ぐらい前に、山口百恵さんと三浦友和さんの主演で

映画化されていますよね。これがお二人の馴れ初めだったとか。

小説はとても短くて読みやすく、読後甘酸っぱい気分に浸れます。

若い人にも読んでもらいたいですが、大人になってから

再読するのもいいかもしれませんね。

他におススメなのが、『雪国』『千羽鶴』『古都』『眠れる美女』。

(すべて新潮文庫

雪国 (新潮文庫)

雪国 (新潮文庫)

古都 (新潮文庫)

古都 (新潮文庫)

眠れる美女 (新潮文庫)

眠れる美女 (新潮文庫)

川端康成を代表する文学と言えるこれらは、

どれも叙情性豊かな作品です。

『雪国』は越後湯沢の風物を背景に、主人公島村の目から

二人の女性の姿を美しく描いています。

わたくしから見ると、主人公島村はだらしなくて

全然かっこよくないのですが(笑)、

それとは対照的に芸者の駒子と葉子は麗しい。

後の『千羽鶴』や『古都』にも共通して言えますが、

川端康成は女性の愛らしさ、愚かさ、優しさ、哀しさを

見事な筆で描ききっています。

千羽鶴』は女性の業と悲しみを扱った作品。

幻想的な感じで退廃的なムードが漂っています。

『古都』は京都を舞台にした作品。

双子の姉妹を軸に、京都の四季の移り変わりや行事などを

織り込んだもの。二人の姉妹が境遇の違いから

上手くやってゆけないことを悟るところも切ないです。

眠れる美女』はちょっと「エロ」くて「変態」な文学(笑)

なにせ主人公の老人の名は、『江口』。

これって、「エロ」と読めません?

川端が茶目っ気のあった人物であることが伺えます。


また、川端康成は優れた批評家でもあり、

新人発掘の才能があったようです。

芥川賞の選考には創設当時から亡くなるまで携わっており、

三島由紀夫などを見出したのは彼だと言われています。


他にはちょっと変わりどころ(!?)で

『浅草紅団・浅草祭』(講談社文芸文庫

なども面白いかもしれません。

浅草紅団・浅草祭 (講談社文芸文庫)

浅草紅団・浅草祭 (講談社文芸文庫)

こちらは、川端康成が高校生の時に馴染んだ浅草の風俗を

ルポルタージュ風に書き上げた作品です。

『雪国』やその他の抒情小説を書く前に描かれたもので、

川端康成の「中期」の作品と言えるかもしれませんね。


川端康成の文学は、全般的にとても読みやすい文体だと

思います。

すっと頭に入ってきて、こころの琴線に触れる。

他にも沢山の作品を残していますが、

どれにも共通して言えるのはこのことではないでしょうか。

そして、どの作品にも「虚しさ」が漂っている。

これは、川端が肉親の縁に薄かったところから

きているのかもしれませんね。



話は少し変わりますが、

川端康成の本の表装の絵を多く描いている画家は誰か

ご存じですか?

有名なので知っている方も多いと思います。

そうですね、東山魁夷です。

わたくしは個人的にこの方の絵が大好きなんです。

川端康成東山魁夷が交友があり、

往復の書簡集も出版されています。

川端康成東山魁夷ー響きあう美の世界』(求龍堂)。

川端康成と東山魁夷―響きあう美の世界

川端康成と東山魁夷―響きあう美の世界

もし、よろしければこちらもご覧になってみて下さい。

わたくし個人では、もう現在絶版になっているのですが、

新潮文庫から出ている「東山魁夷小画集」のシリーズが好きです。

東山魁夷のことばが散りばめられた珠玉の一品で、

眠る前の布団で眺めたい画集なんです。

今は、古本屋さんでしか手に入れられないのかなぁ・・

残念(TT)



いかがだったでしょうか。

ノーベル賞作家というととっつきにくそうなイメージが

ありますが、それは払拭されたのではないでしょうか?

是非是非、手にとって見て下さいね!

古典の名作を新訳で

chiaki50612008-11-09

少し寒くなって来ましたね。

冷え症のわたくしには辛い季節(TT)

今回はこの日本よりもっと北にあって

寒く広い大地の文学をご紹介しましょう。


つい最近『カラマーゾフの兄弟』(光文社古典新訳文庫全五巻)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

を新訳された亀山郁夫さんが

ロシアのメドベージェフ大統領から

ロシア語とロシア文化を広めた外国人に贈られる賞、

プーシキン・メダルを授与されましたね。

この本、去年辺りから良く売れていて、

百万部を突破したとか。

ロシア文学はあまり知らない・・という方のために

とっても有名な何点かの作品をおススメします。



ロシア文学は十九世紀が黄金時代だと言われています。

日本では江戸時代が終わり(1868年)明治時代に入った頃ですね。

この時期のロシア文学は後になっても世界各国に影響を与えた

作家が数多く輩出しており、代表的な作家では

プーシキンゴーゴリツルゲーネフ、ドエトエフスキー、

トルストイ、チエーホフなどがいます。

罪と罰』や『戦争と平和』、『アンナ・カレーニナ』など

作品の名前も映画や劇になっていてかなり有名ですよね。

でも・・小説で読もうとなると、とても長い。

しかも難解な感じ(笑)

ちょっと腰がひけちゃいますよね。

そんな方は、無理せずに

まずは映画や劇から入るのもいいと思います。

戦争と平和』はオードリーが出演しているものもありますし、

アンナ・カレーニナ』はグレダガルボ主演や

最近ではソフィー・マルソー主演のものもあります。

こういうもので、先に予習してから小説を読むと

時代背景や雰囲気が分かりやすくてよいと思いますよ。

また、最近あらすじのわかるコミックが出ていて、

カラマーゾフの兄弟』や『罪と罰』はイーストプレスから出版されています。



わたくしが個人的に好きな本は、

ツルネーゲフ『初恋』(岩波文庫新潮文庫光文社古典新訳文庫他)

トルストイアンナ・カレーニナ』(新潮文庫上中下巻)、

『文読む月日』(ちくま文庫上中下巻)。

初恋 (光文社古典新訳文庫)

初恋 (光文社古典新訳文庫)

アンナ・カレーニナ(上) (新潮文庫)

アンナ・カレーニナ(上) (新潮文庫)

文読む月日〈上〉 (ちくま文庫)

文読む月日〈上〉 (ちくま文庫)

『初恋』はツルネーゲフ自身ももっとも愛した小説と

言われていて、甘酸っぱくて切ないストーリーです。

アンナ・カレーニナ』は簡単に言うと二つの愛の物語です。

それが壮大なスケールを舞台に描かれていて・・

長編ですが凄く引き込まれるので、読みやすいと思います。

『文読む月日』は小説ではなく、名言集のようなもの。

でも、これが、とても胸に響く珠玉のようなことばたちで、

素敵なんです。

二十世紀以降の作家さんでは、

ロシア出身で後にアメリカに亡命したウラジミール・ナボコフ

ノーベル文学賞作家ボリス・パステルナークが

有名な方々でしょうか。

ナボコフは幻想的な作風でファンがとても多く、

有名な作品の一つに『ロリータ』(新潮文庫)があります。

ロリータ (新潮文庫)

ロリータ (新潮文庫)

この作品は読んでいなくても言葉を知っている方は

多いのではないでしょうか(笑)

小説もタイトルを裏切らない面白さですよ。

パステルナークは『ドクトル・ジバゴ』という大変有名な

長編を残しています。

こちらは、今現在絶版になっているかもしれません。

そのため古本屋さんや図書館で探すことになるかもしれませんが、

機会がありましたら是非お手にとって見てください。

スリリングな内容でミステリー好きな方も満足して

頂けると思います。

また、映画の方も有名なので、

そちらで堪能するのもいいかもしれません。


いかがだったでしょうか。

本当に簡単なご案内でした。

哲学がお好きな方や人生を深く考えたい時には、

長編のロシア文学はぴったり当てはまると思います。

「よくわからなかったけど、後々作中のことばが胸に沁みるなぁ。」

という煮干しを噛みしめるような旨味のあるのが

ロシア文学の名作に言える一つの特徴のような気がします。

本棚に一冊ずつ置いて、

時々読み返すのもいいかもしれませんね。

映画『レッドクリフ』を見る前に・・

11/1の日に神田のブックフェスティバルに行ってきました(^^)

初めてだったのですが・・凄い人!!

この日は天気もよくて暖かく、絶好のお出かけ日和でした。

だからかもしれませんね。大勢の人で賑わっていましたよ。


東京に住んでまだ一年ちょっとなんで、

神田の古書街には前から憧れがあったんです(笑)

神田は本好きにはたまらなく魅力的な場所。

何か愉しい出会いはないものかと意気込んでいたんですが・・

人が多過ぎて、ゆっくり本を見られませんでした(泣)

書物との対話を愉しみたいなら、

お祭り以外の時に行かなくてはなりませんね(笑)



さてさて、今日は何の本を・・と思っているのですが、

今、映画『レッドクリフ』で話題になっている三国志の本について

少し触れてみましょうか。


一言で「三国志」といっても、それは壮大な歴史書

わたくしは知識不足なため詳しくは語れません。(すみません)

ただ、簡単なことをお話すると、

三国志』とは、後漢末の三国時代に元蜀の家臣で西晋に仕えた陳寿

が、その当時記録していた歴史書の名前に由来するといわれています。

三国時代とは、魏、呉、蜀がそれぞれ覇権争いをした時代。

そして、曹操孫権劉備らが争い合ったことはよく知られています。

わたくしたちが一般的に親しんできた『三国志』のお話は、

実はこの歴史書ではなく、後に書かれた『三国志演義』の方です。

こちらは、明代の初期に羅貫中らによってまとめられたもので、

三国時代の説話や創作などが盛り込まれたお話になっています。

日本には江戸初期ぐらいには、この『三国志演義』が伝わっていたようですね。



では、この「三国時代のお話」、今わかりやすく読める物語を

いくつかご紹介します。

まずは、吉川英治版『三国志』(講談社吉川英治歴史時代文庫全八巻)。

(現在新装版が出版されています)

新装版 三国志(一) (講談社文庫)

新装版 三国志(一) (講談社文庫)

戦後、三国志ブームを生みだした作品。

そして、これが元になってマンガ化された作品、

横山光輝著の『三国志』(潮漫画文庫全三十巻)。

三国志 1 (潮漫画文庫)

三国志 1 (潮漫画文庫)

この二つの作品は、元祖「三国志本」といえるかもしれませんね。

他に三国志の物語を書かれている作家さんで代表的な方は、

柴田錬三郎安能務陳舜臣さん、北方謙三さん、宮城谷昌光さんでしょうか。

この中で北方謙三さんの『三国志』(ハルキ文庫全十二巻)は

三国志演義」ではなく、「三国志」の正史から物語を作られたため、

人物描写が独特です。

三国志 (1の巻) (ハルキ文庫―時代小説文庫)

三国志 (1の巻) (ハルキ文庫―時代小説文庫)

宮城谷さんの『三国志』(文芸春秋)は今現在刊行中で、

三国志 第一巻 (文春文庫)

三国志 第一巻 (文春文庫)

現在七巻まで書籍化しています。宮城谷さんは、中国歴史小説には欠かせない存在で、

春秋時代の小説など数多くの傑作があります。

陳舜臣さんにも宮城谷さんと同様、中国歴史小説には欠かせない存在。

この方はミステリー小説でデビューされているため、

初期の作品は主にミステリー小説です。

他にも、三国志関連の小説を描かれている作家さんは数多くいらっしゃいます。

また、ゲームソフトなどにもよく利用されていますね。


最後に、「三国時代のお話」のマンガをもう一つ。

蒼天航路』(講談社漫画文庫全十八巻)。

蒼天航路(1) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(1) (講談社漫画文庫)

こちらは、『三国志演義』で「悪役」のように描かれている

曹操を主人公にしたお話です。

横山光輝版の『三国志』と読み比べると面白いと思いますよ。



すごく大雑把な紹介でしたが、いかがだったでしょうか?

三国志」はファンも多く、わたくしはその足元にも及びません。

小説は長いものが多くて、とっつき難ければ、

マンガから入ってゆくのがいいかもしれませんね。

戦乱の世というのは、生活の安定や心の平安、ささやかな幸せを味わえない

時ですが、突出した豪傑が出現する時でもあります。

中国大陸という広大なスケールの中で繰り広げられた知略、戦略、人間ドラマのすべて

を今一度味わいなおしてみるのはどうでしょうか?

映画の予習も兼ねて。

きっとこの三国時代の物語は何かを語りかけてきてくれると思いますよ。

ワールドワイドに読まれていますね(^^)

chiaki50612008-10-30

前の記事に続きまして、村上春樹さんの特集をしようと思います。

今回は春樹さんが訳された外国文学のことや

エッセイなどに触れる予定です。



春樹さんの文学には、しばしば「お酒」と「ジャズ」が登場します。

その関連のエッセイは沢山出ているのですが、

その中で特におススメしたいのは、

『ポートレイト・イン・ジャズ』(新潮文庫)と、

『もし僕らのことばがウイスキーであったなら』(新潮文庫)。

ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)

ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)

もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)

もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)

『ポートレイト〜』はジャズ初心者でも分かり易い内容。

それに加え、和田誠さんの挿絵がとってもキュートです。

『もし僕ら〜』はアイルランドシングル・モルトを学ぶ旅を

されたことが静謐な筆で描かれています。

読み終わった後、ウィスキーの芳香に酔いしれますよ(笑)


春樹さんは「目的のある旅」がお好きなそうで、

アイルランド以外にも、

「パンケーキをお腹いっぱい食べるためにアメリカに行く」

ということもされたそうです(笑)

もし、春樹さんの文学を読んで作中の食べ物が食べたくなったら

『村上レシピ』『村上レシピプレミアム』共に(飛鳥新社)がおススメです。

村上レシピ

村上レシピ

村上レシピプレミアム

村上レシピプレミアム


村上春樹さんは、小説以外にもノンフィクションやエッセイなど多数

出版されています。ご自身がトライアスロンやマラソンをされている

関係からスポーツものもありますし、地下鉄サリン事件を扱ったような

社会派ノンフィクションもあります。

更に深く追求されたい方は是非他もお読みになってみて下さいね。




では、次に村上春樹さんが翻訳されている外国文学にも触れてみましょうか。

春樹さんが訳をされている本は、アメリカ文学が多いのですが、

文学としてとてもメジャーな作品では、

ティファニーで朝食を』(新潮社)『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(白水社

グレート・ギャツビー』(中央公論社)などを訳されています。

ティファニーで朝食を

ティファニーで朝食を

キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)

キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

これらの作品は、既に別の訳者によって翻訳出版されて久しいものなのですが、

春樹さんの訳で新たに息を吹き返した本たちです。

以前読んだことがあるけど、もう一度・・という方は是非どうぞ!

他には、

春樹さんが訳されたことによって日本で読まれるようになった作家さんがいます。

代表的なところでは、

レイモンド・カヴァーとグレイス・ペイリーでしょうか。



わたしが個人的におススメしたい本は、

トルーマン・カポーティ原作のクリスマス三部作、

『おじいさんの思い出』『あるクリスマス』『クリスマスの思い出』(文芸春秋)。

クリスマスの思い出

クリスマスの思い出

山本容子さんの挿絵が入った美しい本で、薄い短編なのですが、

中味はずっしりと心に響きます(笑)

これからの季節にはプレゼントにいいかもしれませんね。


ざっと大雑把に書いてしまいましたが、いかがだったでしょうか?

村上春樹さんの作品は、小説、エッセイ、ノンフィクションから、

翻訳本、絵本まで実に多彩で

すべてを語りつくすことはできませんでした(涙)

また、折に触れてご紹介できればと思います。

次の日本人ノーベル賞作家には・・・

chiaki50612008-10-27


十月もあと少しで終わってしまいますね。

月日が流れるのは本当に早いと感じる今日この頃です。


さて、今月初めにフランス人の作家ジャンマリ・ギュスターブ・

ル・クレジオさんがノーベル文学賞を授与されることに

決まりましたね。

ノーベル文学賞は作品にではなく、その方の業績に捧げられる

ことが多いので、受賞作というのはないのですが、

ル・クレジオさんの作品に興味をもたれた方は是非お読みになって

下さい。集英社などから多くの翻訳本が出版されていますよ。


もしかすると、不思議に思われてる方がいらっしゃると

思うので、申し上げますと(笑)

今回は、ル・クレジオさんの本を取り上げたいわけではないんです。

(ごめんなさい!クレジオさん。)

実は、今回おススメしたい本は別にあるんです。


みなさんは、日本人でノーベル文学賞を受賞されている方が

何人いらっしゃるかご存じですか?

そうですね、お二人で、

川端康成大江健三郎さんですね。

他にも受賞されてはいませんが、候補に挙がっていた方も

大勢いらっしゃるんです。

代表的なところで、谷崎潤一郎井上靖三島由紀夫安部公房

遠藤周作などでしょうか。

ええ、でも、いま存命の作家さんで、おそらく一番賞に近い作家さんは、

村上春樹さんではないかと思っているのです。

村上さんは、日本の文学界が芥川賞を渡すタイミングを逃した(!)

作家さんの一人だと思っています。

前置きが長くなってしまいましたが、

今回はファンの多い村上春樹さんの作品を

取り上げてみることにいたしましょう。



村上春樹さんの作品で、真っ先に思い浮かぶ作品はなんでしょうか?

きっとそれぞれ違うと思います。

では、最初に春樹ブームを巻き起こした小説と言えば、

そうですね、『ノルウェイの森』(講談社文庫上下巻)ですね。

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

おそらくこの小説は説明不要なのではないでしょうか?(笑)

あまりに有名な小説で誰もが名前ぐらいは知っていると思います。

現在累計で何万部まで売れているのか(すみません)わかりませんが、

これを品切れさせている本屋さんは本屋さんではない!(笑)

と断言できるぐらい、メジャーな本です。

春樹さんの作品は、どの作品もよく読まれていて、

最新刊のみならず、既刊のちょっとマイナーな短編でさえよく売れます。

小説だけではなくエッセイも然り。

このような作家さんは、他にあまりいらっしゃいません。


わたしは、きっと春樹さんの文章には、

人を心地よく酔わせる美しいリズムがあるのだと思っています。

小説の内容は、文章が平易なのにもかかわらず、大変難解だと

言われています。

それなのに、これだけ多くの人(国内だけではなく外国でも)

読まれ続けているのは、春樹節が人の奥深い魂に

――心の琴線に触れるからではないでしょうか?


良い文章には良いリズムがあります。

文学作品も一つの芸術作品に他なりません。

ストーリーが多少難しくても、

そこから醸し出される旋律が人を惹きつけるのです。


村上さんの作品で、ファンの方からよく薦められるものの一つに

国境の南、太陽の西』(講談社文庫)があります。

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

表題になっている『国境の南』というジャズの曲を

ナット・キング・コールが歌っている・・と作中に出ているのですが

どうやらこちらは春樹さんの勘違い(!?)だったようです。

本当のところは不明で、春樹さんは「そのような曲があったように思ったが、

調べたらなかった。けれども、その曲がなくても、いや、むしろ

ない方が物語っぽくていいかな。」というようなことを

どこかで語ってられたように思います。

(すみません、この話ちょっと不確か。間違っていたらすみません。)

何はともあれ(汗)、こちらも素敵な小説。

「ジャズを流す上品なバー」で働く主人公の元に、幼い頃好きだった

女性が現れるんです。主人公は三十代の奥さんのいる人で・・・

様々に揺れ動く心の危うさを描いています。

読んだ後に、「ジャズを流す上品なバー」で一杯飲みたくなりますよ(笑)


春樹さんの小説ではしばしば、ジャズやバーが登場します。

この特集はまた次にして、

もう何点かおススメしたいと思っています。

まずは、『風の歌を聴け』(講談社文庫)。

風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)

春樹さんのデビュー作で、群像新人文学賞受賞作。

ビートの早いジャズを聴いているような感覚を愉しめます。

次に『蛍、納屋を焼く、その他短編』(新潮文庫)。

『蛍』は『ノルウェイの森』の前身となった小説だと言われています。

他には市川準監督で映画化されている『トニー滝谷』という短編。

レキシントンの幽霊』(文春文庫)に収録されている短編です。

読後、静けさの余韻に浸れると思います。


春樹さんの作品、いかがだったでしょうか?

実はまだまだ紹介が足りないので、

次も春樹さん特集で行こうと思っています(笑)

春樹さんの作品は奥が深いなぁ・・・

現代語訳・源氏物語を読む  

chiaki50612008-10-20


随分と涼しくなってきましたね(^^)

  前回は林真理子さんをお届したのですが、

  今回は『源氏物語』を特集してみようかと思います。

  今年は『源氏物語』が描かれてから千年目の年。

  色々なメディアで紹介されているので、
 
  このことをご存じの方は多いと思いますが、

  改めてこの壮大なスケールの物語を読み返してみましょう。


  
  では、まず手始めに・・・

  超初心者の方や

  興味はないけど読まなくちゃいけない!(笑)という学生の方へ

  瀬戸内寂聴さん訳の『源氏物語』(講談社文庫全十巻)と

  大和和紀さんの『あさきゆめみし』(講談社まんが文庫全七巻)を

  おススメします。

源氏物語 巻一 (講談社文庫)

源氏物語 巻一 (講談社文庫)

あさきゆめみし(1) (講談社漫画文庫)

あさきゆめみし(1) (講談社漫画文庫)

  『源氏物語』を原文で読むのは至難の業。

  その点寂聴さん訳はとっても読みやすくて、

  昼メロを見ているような感覚で読めてしまいます。

  『あさきゆめみし』も同様。

  こちらの方がマンガである分更にイメージし易いかも

  しれません。

  余談ですが、寂聴さんの『源氏物語』は箱入りハードカバーが

  おススメかも。とっても美しい表装で、

  お部屋の本棚に飾っておくだけで箔が付きます。

  わたくしこの本の刊行当時京都の書店にいたので、

  沢山売らせて頂きました(^^)

  
  
  『源氏物語』は寂聴さん以外にも訳をされています。

  代表的なところでいきますと、

  与謝野晶子谷崎潤一郎円地文子さん、田辺聖子さん

  といったところでしょうか。

  其々個性ある口語訳をされていて大変面白く、

  読み比べをしてみるのもまた興味深いと思います。

  与謝野晶子は自身が歌人であることから

  短歌により焦点を当てています。

  自身の歌が各章ごとに散りばめられた香り高い文体を愉しめます。

  谷崎潤一郎光源氏嫌いで(!?)

  主人公にちょっと批判的(笑)

  けれども、さすがは谷崎潤一郎

  豊かな表現力で原文に忠実に訳された麗しい文体です。

  田辺さんは谷崎潤一郎とは打って変わって

  光源氏大好き(笑)

  とっても庶民的な感じのする源氏物語が楽しめます。

  円地さんの訳はとっても艶麗な文体にもかかわらず、

  与謝野晶子谷崎潤一郎に比べるとぐっと

  読みやすくなっています。

  『源氏物語』を更に追及したい方には

  これらの本もおススメです。

  

  口語訳以外にも『源氏物語』は

  エッセイや評論など数多くの本が出版されています。

  海外に及ぼした影響も量り知れず、
 
  フランス人女性作家マルグリット・ユルスナール

  『東方綺譚』(白水社Uブックス)という短編集の中で

  『源氏物語』の中の「雲隠」の章の補足をしています。

  死にゆく源氏に最後に寄り添ったのは花散里だという物語です。

  他には同じくフランス人で二十世紀を代表する作家の一人と

  言われるマルセル・プルーストの『失われた時を求めて

  (集英社文庫ちくま文庫

  も源氏物語に一番近い文学だと言われています。

  本当に凄い影響力ですね。


  話がどんどんそれてしまいそうですが、

  最後に一点だけ。

  俵万智さんの『愛する源氏物語』(文春文庫)。

愛する源氏物語 (文春文庫)

愛する源氏物語 (文春文庫)

  俵さんはこの本で2003年に紫式部文学賞を受賞されています。

  短歌に重点を置かれたエッセイなんですが、

  万智訳(!)をされていて大変興味深いです。

  与謝野晶子紫式部を評価してあえて短歌の訳をしなかった

  ところから考えると、さすがは俵さんといったところでしょうか。

  源氏物語の入門書としても最適です。

  

  いかがだったでしょうか?
 
  今回は少し長くなってしまったのですが、

  『源氏物語』に関するお話は沢山あって、

  書ききれなかった部分もあります。

  またいつか特集してみたい記事ですね。


  

  

  

  

  
  

  
  



  

  

  

  

  

   

  
  

  

  

  

敬愛なる林真理子さま

    本好きの皆様ようこそ! 

  ブログ初心者で、新規開店致しました本の蟲です。

  これから日々、思いつくままに様々な本を紹介していこうかなっと

  思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

  
  さてさて、早速ですが・・・

  何だか世の中不景気なニュースばかりなので、

  パァーっと明るくなれそうな本をご紹介しましょうか。

   まず、一冊目は、林真理子さんの『アッコちゃんの時代』(新潮社)。

アッコちゃんの時代 (新潮文庫)

アッコちゃんの時代 (新潮文庫)

  こちら単行本の発売は2005年だったんですが、去年文庫になりましたね。

  林さんの小説作品は単行本ではあまり売れない(キャー林さんごめんなさい!!)

にもかかわらず、初速から良い売れ行きをしたちょっと

例外的な本でした。

  林さんはエッセイもよく売れますし、主に文庫本になってからの

売上が凄い作家さんなんですよね。

  かくいうわたくし、文庫になってから読んでみたのですが、

  さすが人気作家さん!と舌を巻き巻きしました(笑)

  時代はバブル絶頂の頃。 
  実在したと言われるモデルさんを主人公にし、

その方を取材する女性作家(多分これが林さん)

  の視点を交えながら、お話は進行してゆきます。

  誰もが踊らされて、浮かれていた時代。  
  今からでは考えられないぐらい華やかで、おしゃれで、お金持ち。

  ブランド物の服に身を包み、夜な夜な六本木で美味しいごはんやお酒を飲んで、

  特別な日でもないのにカルチェやティファニーの宝石をプレゼントされる・・・

  まるでお伽噺のようだけど、これに近い生活をしていた人達が

この当時は結構いたんだ!

  と読み終わって感嘆の溜め息を漏らしてしまいました。

  毎日じゃなくてもいいけど、時にはこんな生活を味わってみたいっ!と

  まるでシンデレラのように夢見ちゃいましたね(笑)

  
  次にご紹介したいのは、同じく林真理子さんの『RURIKO』(角川書店)。

RURIKO

RURIKO

  これも華やかさ具合では決して負けてはいません(笑)

  ただこの本は、一冊目と時代設定が違う上に、

主人公が大女優さんというところが大きく異なっています。

  ええ、「大女優さん」。もうこの時点で既に煌びやか(笑)

  日本映画がとっても盛況だった頃。俳優が雲の上のような存在でプライベートが

  神秘のベールに包まれている時代。

  主人公は浅丘ルリ子さん。

  そして、このお話も林さんの鋭い観察眼が交えらながら

進んでゆきます。

  林さんは、この物語でおそらく一番描きたかったのは、

  石原裕次郎さんや美空ひばりさんのことだと思います。

  主役はあくまで浅丘ルリ子さんなのですが、

今尚ファンを魅了して止まない裕次郎さんやひばりさんのお話が

沢山出てくるのです。

  林さんはアンアンのエッセイなどでもお馴染みですが、

  お洒落やグルメのことをとても素敵に描いて下さいます。

  ご自身も成功したセレブな方だからだと思うのですが、

  元々のお嬢さん育ちの方とは違う親近感の持てる筆遣いなんですね。

  今回取り上げたこの二つのお話にも

林さんの良さが十二分に発揮されていると思います。

  
  とても拙い表現でしか紹介できませんでしたが、いかかだったでしょうか?

  もし、ご興味を持たれた方はぜひご一読下さいませ。
 
  余談になりますが、林真理子さん以外にも中村うさぎさんなんかも

  面白いエッセイを書かれていますよ。

  ちょっと趣向が異なりますが、週刊文春に掲載されている

  お買いものし過ぎて破産するエッセイはとっても愉快です(笑)

  また後日中村うさぎさんは取り上げたい本があるので、この辺りで。

  では、また近いうちにお目にかかりましょう。