旅で出会った作家〜大分県臼杵市編〜

chiaki50612010-01-19

もう、正月気分もすっかり抜けてしまったのですが・・

年末年始の休みに大分の別府と湯布院に行ってきました。

湯布院はお洒落なお店がいっぱいあって素敵でした。

別府はさびれていたのですが、とっても温泉がよくて素敵でした。

大分を満喫した3泊4日だったのですが、

実は今回の旅行で、臼杵市まで足をのばしたんですね。

臼杵市ってご存知ない方も多いでしょうか?

別府市の南の方にある町で、食べ物ではフグが有名。

また臼杵城というお城が市の中心部にあって、

現在は埋め立てられていますが、城のあった当時は海に囲まれているお城でした。

有名人だとグローブのKEIKOさんの出身地として知られているかもしれませんね。

でも実は、ある女性作家さんの出身地としても有名な所です。

そうなんです、今回は臼杵市出身の野上弥生子さんのことについてご紹介したいと思います。



本当のところは、わたくしも野上弥生子さんのことについては

臼杵市の文学記念館に行くまで殆ど何も知らなかったんですね。

書店員をやっていた関係で、お名前と何作かの作品が文庫であることだけ

知っていました。

今は、絶版になっている作品も多いと思います。

けれども、決して絶やしてはいけない、この方のスピリッツを

もっと多くの方に知ってもらいたいと強く思いました。

そのため、わたくし自身も只今勉強中という状態ですが、

みなさんにおススメしたいと思います。


野上弥生子さんは、『アルプスの少女ハイジ』の翻訳で

一番よく知られているかもしれません。

現在、岩波文庫から『アルプスの山の娘』で復刻版が出ているかと思います。

アルプスの山の娘―ハイヂ (岩波文庫)

アルプスの山の娘―ハイヂ (岩波文庫)

けれども、今回は野上さん自身の作品と、親交のあった作家さんたちに焦点をあててみたいと思います。

野上さんは14歳の時に東京に出てこられ、明治女学校に入学。

その後、夫となる野上豊一郎氏と結婚。

この夫となった方が、夏目漱石のお弟子さんだった縁で、

漱石先生に師事し、野上弥生子さんは小説を書くことになったんですね。

彼女は、どうしても小説家になりたかったという人ではなかったようで、

漱石先生に認められる作品であればそれでよかったようです。

99歳まで現役で作家をされていた方のスタンスとしては

ちょっと意外な感じですね。

私が野上弥生子さんに受けた第一印象は、

「とっても人との出会いに恵まれた方」ということでした。

生涯の先生とした夏目漱石ももちろんですし、

夫の同級生だった岩波茂雄岩波書店の創業者)、学者の寺田寅彦

後輩になる芥川龍之介、心の恋人だった中勘助など、

多くの著名な方と日常的に交流をされていました。

また、女流作家さんだと、宮本百合子湯浅芳子などと親交が深かったようです。

この辺りのことは、野上さんの日記を紐解けば更に詳しく分かるかもしれませんね。


野上さんの作品で、わたしが個人的に興味を抱いたのは、

『真知子』と『迷路』、そして『秀吉と利休』でした。

現在どれも新刊書店での取り寄せは難しい作品ですが、

過去には岩波文庫新潮文庫、角川文庫、中公文庫などで発売されていました。

(『迷路』はワイド版で岩波書店から発売中です)

そのため、図書館か古書を探されるのがよいかと思います。

『真知子』はその当時(昭和初期)の一番先駆者的な女性を描いた作品です。

今でこそ女性が政治家や企業家になっても肯定される時代ですが、

この当時は、女であるということだけで幾つもの壁があった時代です。

「真知子」は野上さんの性質の一部だったのではないでしょうか。

とても読んでみたい作品の一つです。

『迷路』もその当時(昭和初期、大戦へと向かう時期)の世相を批判した大作です。

こちらも『真知子』と一緒に読んでみたい作品ですね。


野上さんのことを調べると、

女性なのにとっても骨太な作品を多く生み出された方なんだなぁとしみじみ思ってしまいました。

『秀吉と利休』は歴史ファンにとってはとても興味深い作品なのではないでしょうか。

今でこそ、小説の題材として「秀吉」と「利休」は対比させて描かれることが多いですが

これはもしかすると、野上さんが一番最初に目をつけた方かもしれませんよ。

こちらも興味がそそられますね。

以上が、私が臼杵市に行き、野上弥生子さんと出会った(!)感想でした。

「女性である前にまず人間であれ」

ということばが胸に沁みる今日この頃です。

年が新しくなると、人は古くなる(><)

いやいや、新年明けましたね。

もう明けて一週間以上経っちゃいましたが(笑)

直木賞芥川賞の発表がありましたね。

今回(第142回)の直木賞芥川賞の作家さんは

芥川賞・・・該当作なし

直木賞・・・佐々木譲さん・白石一文さん

でしたね。

白石一文さんは親子二代で直木賞を受賞されましたね。

これは初めてのことなんですよ。

ちなみに今回の候補者リストは(敬称略)

芥川賞候補リスト】

大森兄弟『犬はいつも足元にいて』(文芸冬号)

羽田圭介『ミート・ザ・ビート』(文学界12月号)

藤代泉『ボーダー&レス』(文芸冬号)

舞城王太郎『ビッチマグネット』(新潮9月号)

松尾スズキ『老人賭博』(文学界8月号)

直木賞候補リスト】

池井戸潤『鉄の骨』(講談社

佐々木譲『廃墟に乞う』(文藝春秋

白石一文『ほかならぬ人へ』(祥伝社

辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』(講談社

葉室麟花や散るらん』(文藝春秋

道尾秀介『球体の蛇』(角川書店

となっていました。

白石さんと佐々木さんのこれからの益々のご活躍を心より応援しております(^^)/


では、昨年の続きで、「池波正太郎さんの美味しいお話」といきますか。

池波正太郎さんが食通として知られていたことは、みなさんご存知の通りです。

「食」以外のエッセイも多く、小説はもちろんのことながら、

エッセイもとても面白く興味深く読めます。

実は今回の選書、迷いました。

いやいや、池波正太郎さんの多大な著作から何をおススメするのが

一番、みなさんに喜んでもらえるのかと思うと・・・

まあ、これは毎回のことなんですが(笑)

ではでは、外せない作品から

『散歩のときに何か食べたくなって』(新潮文庫

散歩のとき何か食べたくなって (新潮文庫)

散歩のとき何か食べたくなって (新潮文庫)

このエッセイが書かれたのは昭和50年頃で、浅草や銀座のお店が多く登場します。

もしかすると、今は随分と様子が変わってしまったのかもしれませんが、

「古きよき時代」を偲ばせるにはもってこいの作品になっています。

「池波さんは食いしん坊だなぁ」と微笑ましく想いながらも

決して文章の品格は落ちないところが、さすがだなと、思わせる一品です。

こちらの作品に関しては、平凡社から「コロナブックス」というシリーズで

写真付のガイド本のようなものも刊行されています。

よろしければ、そちらもどうぞ。


次の作品としましては、

『食卓の情景』(新潮文庫

食卓の情景 (新潮文庫)

食卓の情景 (新潮文庫)

こちらが上の作品と少し異なるところは

「食」を中心としながらも、ご自身のことや人生について語られているところです。

食べることは生きることで、それを大切にそしてより豊かにしたいものだなぁ・・と、

しみじみ思ってしまう作品でした。

こちらも是非試してみて下さいね。


他にも写真付のものなど沢山出ておりますが、

前にご紹介した、「鬼平」と「梅安」好きには

鬼平舌つづみ』(文春文庫)、『梅安料理ごよみ』(講談社文庫)

鬼平舌つづみ (文春文庫)

鬼平舌つづみ (文春文庫)

梅安料理ごよみ (講談社文庫)

梅安料理ごよみ (講談社文庫)

などもおススメです。


何年か前に、台東区の図書館にある「池波正太郎記念文庫」に行ってみました。

池波さんの自筆原稿や、書斎部屋が再現されていて、

「名作はこのようにして作られたんだなぁ」

と、とても興味深く感心いたしました。

もし、本好きな方でこちらにも関心がおありなら、

是非行ってみて下さいね!!

池波正太郎さんのこと

いやいや、前回の日記では、時代小説のほんの「さわり」だけをご紹介しましたので

物足りなく感じられる方がほとんどだと思います。

「時代小説って言ったら他にももっとあるだろ(怒)」と、

時代小説ファンに怒られないうちに、もっともっと(笑)

ご紹介したいと思います。

前回の最後に予告しました通り、今回は「時代小説・読み物」の続きで

大御所の池波正太郎さんをご紹介します。

池波正太郎さんのことを改めてご紹介しなくてもご存知の方が多いと思います。

鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』『真田太平記』など有名なシリーズものを

多く書かれているので、

「読んだことはないけど、テレビドラマで見たことはある」という方も

多いのではないでしょうか?

池波正太郎さんは上の代表作以外にも多くの作品を残されています。

すべて網羅できないかもしれませんが、池波さんの作品をいくつかのカテゴリーに

分類してみますね。

鬼平犯科帳』シリーズ(江戸時代・火付盗賊改もの)

剣客商売』シリーズ(江戸時代・剣士もの)

仕掛人・藤枝梅安』シリーズ(江戸時代・仕掛人香具師もの)

真田太平記』シリーズ(戦国時代末期〜・真田もの)

『忍の女』など(主に戦国時代・忍者もの)

『上意討ち(短編集)』など(江戸時代・新撰組・剣豪もの)

『あほうがらす(短編集)の中の『元禄色子』』など(江戸時代・赤穂浪士もの)

大別するとこんな感じではないでしょうか。

全体の印象としては、江戸時代を舞台に描かれている「読み物」が多く、

歴史的な事実もお話の横軸、もしくは縦軸に組み込まれている作品があります。

前回ご紹介した畠中恵さんや宮部みゆきさんが、あまり『歴史』とは関係の無いお話だったのに対し、

池波さんの作品は全く無縁ではありません。

こんな風に言うと、敬遠してしまう方がおられるかもしれまんせんが、

それも全く心配要りません(笑)

池波さんは、小説に専念される前までは劇作家として活躍されていたこともあったので、

お話の展開がよく、人をぐいぐいと惹きつけてしまうんですね。

よく古典の名作にありがちな「読書=忍耐」という式もあてはまりません(笑)

「面白くて、すぐに読める。しかも、人を飽きさせない。」

これが池波正太郎さんの作品全般に対して言えることだと思います。


みなさんの興味がそそられたところで、池波さんの作品をご紹介。

やはりシリーズものは外せないので、

鬼平犯科帳 01巻』(文春文庫)、『剣客商売 01巻』(新潮文庫)、『仕掛人・藤枝梅安 01巻』(講談社文庫)

新装版 鬼平犯科帳 (1) (文春文庫)

新装版 鬼平犯科帳 (1) (文春文庫)

剣客商売 一 剣客商売 (新潮文庫)

剣客商売 一 剣客商売 (新潮文庫)

新装版・殺しの四人 仕掛人・藤枝梅安(一) (講談社文庫)

新装版・殺しの四人 仕掛人・藤枝梅安(一) (講談社文庫)

シリーズものだと、「長編なのではないか?」と勘違いされる方がたまにおられますが、

これらのシリーズものは、すべて短編の集合体です。

ただし、普通の短編と違うところは、途中から読むと登場人物などが分かり辛いところです。

そのため、出来れば1巻目から読み進められることをお勧めします。


鬼平犯科帳』は江戸時代中期、寛政の改革1787年)の頃、実在する長谷川平蔵をモデルにしています。

実在の長谷川平蔵火付盗賊改方長官だったのは、1787年から1795年まで。

この時期は数年前に起きた浅間山噴火、それに伴う農作物の凶作などにより

経済が著しいインフレ状態にあり、世情が不安定になっていた時でした。

世の中がそんな状態のときは、凶悪な犯罪が増えるというもの。

火付盗賊改方こと「鬼の平蔵」が江戸市中を取り締まるのです。

実在した長谷川平蔵の資料はあまり残っていないみたいなんですが、

もしかしたらこんな人だったんじゃないかな、と「池波版鬼の平蔵」は

思わせてくれます。

「悪を征するには、悪人まがい(?)のこともする」

正義を貫くには、正しい手段、手法だけではなく、

悪の人脈を活かしたスパイ活動なども行う・・と

とてもスリリングで痛快な物語になっています。

実在の長谷川平蔵は高い犯人検挙率を誇り、またその速さでも有名でした。

彼は、拷問を伴わない、犯人の自供による逮捕をモットーにしていたようで、

その後の警察の在り方を問い直した人でもありました。

読んでみたくなりません?(笑)是非、初めの一話目だけでも読んでおくんなまし〜

(ちなみに『鬼平犯科帳』は文春文庫で24巻まで出ております)


次は、『剣客商売』。

剣客商売』は藤田まことさんの主演でドラマ化されている作品が

みなさんのお馴染みのところでしょうか。

主人公は秋山小兵衛と秋山大治郎。

この二人は親子で、小兵衛が父で藤田まことさんがされていた役になります。

この父子、どちらも剣の達人。

けれども(!)性格は両極端。

小兵衛は「粋な道楽爺さん」で、大治郎は「堅物な好青年」なのです。

時代は、江戸中期。老中田沼意次が政治の実権を握っていた頃。

そうですね、『鬼平犯科帳』よりほんの少し前ということになりますね。

秋山親子は、この時代に剣に命を駆けて、江戸で起こる様々な事件を

解決してゆくわけです。

こちらもとっても愉しいお話になっております。

是非、ページをめくってみて下さいね!

(『剣客商売』は新潮文庫で全16巻出ております。番外編なども数冊あります。)

 
最後は『仕掛人・藤枝梅安』シリーズですね。

こちらのシリーズは講談社文庫で全7冊と他のシリーズよりはやや少なくなっています。

これには理由がありまして、

一つには池波さんが亡くなられたために、シリーズを書き続けられなかったことが

あります。

もう一つの理由としましては、池波さん自身がインタビューか何かで、

「『藤枝梅安』シリーズは「殺し」という暗いテーマだから、鬼平や剣客に比べるとどうしても筆が重くなる」

というようなことを仰っておられました。

鬼平〜』や『剣客商売』が「正義のために」という大義名分があるのに比べ

仕掛人』シリーズにはややその辺の説得力に欠けるのかもしれません。

普段は鍼医者として何食わぬ顔で生活しながら、

裏では報酬をもらって「殺し」もする・・・

「正義の味方」とは無縁の怖−いお医者様ですね(笑)


ざっと簡単にご紹介しましたが、いかかでしたでしょうか?

実は、まだまだ書きたいことがありまして、

ええ、そうです。池波小説ファンの方なら、きっとお気付きのはず。

そうなんですよ。池波さんの小説を読むと

無性に食べ物が食べたくなるんですよ。

それも、湯豆腐とか白和えとかそんな素朴な和食が・・

池波さんは美食家としても有名な方で、

小説を書く合間の散歩ついでに、

よく食べ歩きをされていたそうです。

次は、池波正太郎さんの「美味しいお話」を少ししましょうかね。

時代小説+初めの一歩

随分と日が空いてしまいました(笑)

2009年は新しく仕事を始めたために全然時間が取れず・・(言い訳)

2010年からは気持ちも新たにもう一度日記を更新してゆきたいと思います!!

まず、手始めに・・

前の日記から丁度一年ぐらい経ってますね。

今年(2009年)も暮れようとしています。

年末・年始になると本屋さんが賑やかになりますよね。

今年は不景気で中々本も売れなかったと聞きますが、

来年は景気も本もよく売れる年になって欲しいものです。

さてさて、そんな不景気な中でも今年よく売れた本は

1Q84』、『読めそうで読めない間違いやすい漢字』、

オバマ演説集』、『告白』などなどでした。

わたしは、どれもちゃんと読んでないのですが(笑)

村上春樹さんの『1Q84』(新潮社刊)はいずれ読みたいと思っています。


1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 1

春樹さんのことは、ずーっと昔の私の日記でも何度か触れていますが、

本当に凄い人気ですね。

1Q84』もすでに中国などでは翻訳本が発売されているとのこと。

小説が中々売れない中、春樹さんだけは別格ですね。

現在春樹さんはBOOK3の執筆中とのことです。



では、久々に本のご紹介を・・

年末と言えば、みなさんはどのような小説が読みたくなりますか?

ミステリーか時代小説でしょうか(誘導尋問!)

この時期は、書店にもこの二つのジャンルの本が所狭しと並びます。

去年は、ミステリーをご紹介したと思いますので、

今年は、時代小説をみなさまにご案内したいと思います。


『時代小説』、と一言で言ってしまうのは簡単なんですが、

実はとても奥の深いものなんですね。

もちろん、ミステリー小説も、海外の小説も、世に存在するすべての小説に言えることですが

『時代小説』の中には、ミステリーも恋愛も歴史も・・ありとあらゆるものが

詰まっていると言えるジャンルの小説なんですね。

そもそも、それぞれ独創的な小説をジャンルに分けようというのが、

間違っているのかもしれません。

でも、多くの小説をある程度のカテゴリーに分けてあげないと、

小説を求めに来た人にとって不親切な本屋、もしくはサイトになりかねません。

『時代小説』というカテゴリーもそんな小説への誘いの大きな目印ぐらいでしか

ないかもしれませんね。


話が逸れてしまいましたが、そんなわけで今回は大きな括りでの『時代小説』(笑)

現在『時代小説』は他の日本のミステリー小説や現代小説に比べ、少し売上が落ちてしまいます。

これはとても残念なことなのですが事実なんです。

どうも『時代小説』というのは「とっつき難い」というイメージがあるのかもしれませんね。

そこで、そんな方々にでも読んでいただけるようなとっておきの『時代小説』を

ご紹介したいと思います!!


今回取り上げる『時代小説』群は「学校で歴史を勉強したけど、もうすっかり忘れた」方や

「歴史にあんまり興味がないので、歴史上の人物やその物語に何ら憧れがない」、

または「歴史の事実に則した内容だと、結末が分かっていてつまらない」という方に

おすすめの本を取り上げたいと思います。そのため、「歴史好き」で

「歴史の新しい価値観やその時の時代背景などを詳しく知りたい」という方には

向いていないかもしれません。今回取り上げるのは、「読み物」です。



まずは、若い方にも比較的人気のある作家さんのものから。

畠中恵さんの『しゃばけ』(新潮社文庫)シリーズ。

しゃばけ

しゃばけ

この作品で畠中さんは、2001年に第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞されました。

舞台は江戸時代。薬種問屋の体の弱い『若旦那』が主人公。

ただし、主人公の周りには『人』ではない妖怪ぞろい。

『若旦那』は妖怪たちと一緒に、大江戸で起こる様々な事件を解決してゆきます。

この小説は、背景に「大江戸」を置いていますが、内容はミステリー仕立て。

ユーモアーに溢れ、楽しく軽快な気分になれます。

事件毎にお話が完結しているので、短編感覚で読めると思いますよ。

現在第8弾にあたる『ころころろ』が最新刊となります。


次は同じく「読み物」でゆくと宮部みゆきさんの『幻色江戸ごよみ』(新潮文庫)。

幻色江戸ごよみ (新潮文庫)

幻色江戸ごよみ (新潮文庫)

宮部さんの作品は、時代小説以外のものでご存知な方が多いのではないでしょうか?

代表作には『魔術はささやく』、『火車』、『理由』、『模倣犯』、などなど

数え切れないぐらいの名作を書かれています。

この宮部さんなのですが、実は時代小説もいくつか書かれています。

その中でも粒ぞろいの短編が詰まっていて、江戸人情と怪異が味わえるのが

『幻色江戸ごよみ』ではないでしょうか。

宮部さんのストーリーテラーぶりにはいつも驚かされます。

いつの時代も生きることには困難が伴うけれども、

それでも、生きることっていいなぁと

こころがほわっと暖かくなれます。

もちろん、少々怖いものも入っていますよ(笑)

これで少しは「『時代小説』食わず嫌い」が緩和されたでしょうか?

実はここまではほんの入り口。

これからが本番(!?)になるのですが、長〜くなりそうなので

次回にします。

この続きはまた後日。

流れでいいますと、池波正太郎さんをご紹介したいと思っています。

乞うご期待!!

芥川賞と直木賞の行方は・・?

新年明けてしまいました。

先月から超多忙で書く暇がなく・・・

まあ、でも、自分のペースで続けていきます(笑)

亀さんペースですが、どうぞお付き合い下さいまし。


今日、新聞を見ていたら、次の芥川賞直木賞の候補作が

発表されていました。有名な賞なのでみなさんよく

ご存じだと思うのですが、

芥川賞直木賞は年に二回、1月と7月に選考会が行われます。

ベテラン作家さん達が、「ああでもないこうでもない」と

銀座や築地などで選評されるんですね。

ちなみに今年の候補作は、芥川賞が(敬称略)

鹿嶋田真希『女の庭』、墨谷渉『潰玉(かいぎょく)』

田中慎弥『神様のいない日本シリーズ』、津村記久子『ポトスライムの舟』

山崎ナオコーラ『手』、吉原清隆『不正な処理』

の6作品。

直木賞が(敬称略)

恩田陸『きのうの世界』、北重人『汐のなごり』

天童荒太『悼む人』、葉室麟いのちなりけり

道尾秀介カラスの親指』、山本兼一利休にたずねよ

のこちらも6作品。


わたくしが書店にいたときは、これが仕事だったのですが、

予測をみんなで立てていました。

そして、候補作の段階から山を賭けて受賞されるであろう作家さんの

作品を発注しておりました。

もちろんこれは、新直木賞作家さんだけ。

芥川賞は受賞してから単行本になることが多く、

稀に既に本になっている場合もありますが、

余程のトピックスがない限りあまり派手なことはしませんでした(笑)

過去には、平野啓一郎さんや、綿矢りささん、金原ひとみさんなどが

世間を騒がせましたね。


では、今回の予想、

やはり本命は、恩田陸さんと天童荒太さんではないでしょうか。

きのうの世界

きのうの世界

悼む人

悼む人

どちらも知名度は充分。恩田さんは何度も直木賞の候補になられています。

天童さんは、作品数こそ多くありませんが、骨太のしっかりした内容の

作品を多く描かれています。今回の作品も満を期しての力作だと

噂されているので、受賞作にはもってこいなのではないでしょうか。

もちろん、他の方が取られても全く遜色はありませんよ。

芥川賞は鹿嶋田さんと山崎さんが何度か候補に挙がっていたような気がします。

もしかすると、キャリア的にももう芥川ではなくなっているかも

しれませんね。立派なベテランと言えるでしょう。


選考会は今月15日。

ニュースでも報道される唯一の文学賞なので、

みなさんも是非注目していてくださいね!

東野圭吾さんの作品は本当に多様ですね

chiaki50612008-12-11

前の日記から随分と日が経ってしまいました。

師走は色々と忙しく・・・

そんなことはさておき、

今回は前回に引き続き東野圭吾さんをご紹介します!



東野圭吾さんの作品は本当に沢山あり、

すべてを紹介するのは至難の業なのですが・・

お次に紹介するのは、『百夜行』(集英社文庫)。

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)

こちらは2005年に舞台化、2006年にテレビ化された作品で

テレビでは山田孝之さん、綾瀬はるかさんが出演されていました。

ご記憶にある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

あらすじは、19年前に起こった殺人事件が迷宮入りしてしまい、

その事件の被害者の息子と容疑者の娘が次々と不可解な凶悪犯罪に

巻き込まれてゆく・・・というもの。

長編ですが読まされます(笑)

そして、哀しい切なさのために胸が苦しくなりました。

こちらは姉妹編に『幻夜』(集英社文庫)があります。

ご興味をお持ちになられたらこちらもどうぞ。


『百夜行』がドラマ化された辺りで同じく山田孝之さん主演で

映画化された作品に『手紙』(文春文庫)があります。

手紙 (文春文庫)

手紙 (文春文庫)

こちらは、「強盗殺人犯の弟」という主人公が様々な苦難に

出会いながらも、刑務所にいる兄とのコミニケーション手段「手紙」を

疎ましく、けれどもどこか懐かしく思う・・というもの。

映画で見るのもよし、原作を読むのも尚よし(笑)です。


他に最近よく売れていた東野圭吾さんの文庫といえば、

さまよう刃』(朝日文庫)などが挙げられます。

さまよう刃 (角川文庫)

さまよう刃 (角川文庫)

こちらは、娘を酷い殺され方をした主人公が殺人犯の一人を

復讐殺人するというもの。

肉親の手で犯人を裁くということが果たして許されることなのか

と考えさせられてしまいました。



ではでは、東野さんの作品の中で決して避けて通れない

加賀恭一郎シリーズと湯川学(ガリレオ)シリーズの

ご紹介といきましょう。

まずは、加賀恭一郎シリーズ『どちらかが彼女を殺した』(講談社文庫)

私が彼を殺した』(講談社文庫)。

どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)

どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)

私が彼を殺した (講談社文庫)

私が彼を殺した (講談社文庫)

加賀恭一郎は練馬署に勤める剣道が上手い刑事。

(シリーズには登場しますが、話はそれぞれ単独で読める作品

なので、刊行順に読む必要はありません。)

『どちらか〜』は、妹の「自殺」に疑問を感じた兄の康正が

妹の元彼と彼の彼女(妹の親友でもある)を殺人犯と確信して

復讐することを誓うもの。

加賀刑事は康正を止めようとするのですが・・

犯人は誰かは、「神のみぞ知る」です。(笑)

私が彼を殺した』も犯人を推理する「フーダニット」作品。

加賀恭一郎シリーズは他に『卒業』『悪意』『嘘をもうひとつだけ』

など多数あります。

東野さんの作品を極めるなら是非どうぞ。

そして、次はお待ちかねの『ガリレオ』シリーズ(笑)

湯川学こと「ガリレオ先生」が、自身の天才的な知能を生かして

難事件を論理的に解決してゆく・・というもの。

ガリレオ先生は大学の物理学准教授で、洞察力や直観力に優れていますが

性格は偏屈(笑)

こちらも刊行順に読む必要はなくどの作品からでも愉しめます。

科学のマニアックな知識を駆使して犯罪を解く形で、

以前人気のあったドラマ『トリック』が好きだった方にはぴったりなのでは

ないでしょうか。

事件が人の怨念や悲哀からなっていて、その背景や心理描写が好き

という方にはちょっと向かないかもしれません。

けれども、理屈っぽくてゲーム感覚で推理をしたいという方にはおススメ。

探偵ガリレオ』、『容疑者Xの献身』(共に文春文庫)、

そして、最新作の『聖女の救済』『ガリレオの苦悩』(共に文芸春秋)、

すべておススメです。

探偵ガリレオ (文春文庫)

探偵ガリレオ (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)

聖女の救済

聖女の救済

ガリレオの苦悩

ガリレオの苦悩

長編が苦手という人にも、『探偵ガリレオ』や『ガリレオの苦悩』は

短編集なので読みやすいと思いますよ。

ガリレオシリーズには上記以外にも『予知夢』(文春文庫)があります。


いかがだったでしょうか。

少しでもみなさまの読書の参考になっていれば・・

と願うばかりです。

では、また、次回も愉しいネタを仕入れてお届しますね!!

映画『容疑者Xの献身』は好調のようで・・

chiaki50612008-11-19

夜がどんどん長くなってきていますねぇ・・

読書するには最適の環境になりつつあります(笑)

本の好みは人それぞれですが、

今回はそんな長夜におススメのミステリー作品を

ご紹介したいと思います。



さて、今年、あちこちでドラマや映画の原作になった

直木賞作家東野圭吾さんをご存じですか?

おそらく多くの方がご存じだと思います。

もし、知らなくても本屋の店頭でドカーンと

平積みされている本を目にしたことがある方は

多いのではないでしょうか(笑)

ええ、今回は東野圭吾さんに焦点を当てたいと思います。



今年だけでみても東野圭吾さんの作品は、

『容疑者Xの献身』映画(フジテレビジョン他)

流星の絆』ドラマ(TBS系)

と実写化されています。

『容疑者X〜』は以前フジテレビ系列でドラマ化されていた

ガリレオ」シリーズとキャストが重なっています。

そうです、福山雅治さんと柴咲コウさんが出演されていた

人気シリーズですね。

流星の絆』は嵐の二宮和也さんが出演されているドラマで

今現在放映中ですね。(TBS系、金曜夜10時)

どちらの原作もとてもよく売れているとか。

映画化やドラマ化されると常からの東野さんファン以外の方も

本を手に取るからでしょうね。


ではでは、東野圭吾さんの魅力的な作品群を

みてゆきましょうか。

東野圭吾さんは1985年に『放課後』で

江戸川乱歩賞を受賞されて作家のキャリアをスタートされました。

その後しばらくはヒット作に恵まれませんでしたが、

96年に『名探偵の掟』が『このミステリーがすごい』の3位に入り

その後98年に『秘密』で大ブレイク。

その後のキャリアはドラマ化や映画化でタイトルをご存じの方は

多いのですが、晴れて2006年『容疑者Xの献身』で直木賞を受賞。

今は日本を代表する人気作家さんのお一人になっておられます。

  注)『このミステリーがすごい』は毎年宝島社から12月に
     出版されている刊行物です。
     ミステリー通からの投票でその年一番面白かった作品を
     ランク付けしています。
     

東野さんの作風は初期の頃は、学園物や本格推理物、パロディなど

とても多彩です。また、キャラクターシリーズはあまり多く

使われておらず、『卒業』『悪意』などの加賀恭一郎と

探偵ガリレオ』や『容疑者Xの献身』の湯川学などに

限られています。最近は「誰が犯人か」(フーダニット)

に重点を置くものから、「どうやって犯行を行ったのか」(ハウダニット

に重点を置くものまで、推理小説の幅を益々広げられています。



では、すべては無理なのですが、一つずつ作品をご紹介します。

まずは、江戸川乱歩賞受賞作品の『放課後』(講談社文庫)。

放課後 (講談社文庫)

放課後 (講談社文庫)

こちらは青春&学園ミステリー。

女子高を舞台に起こる殺人事件の犯人を推理してゆくのですが・・

物語は最後まで何も解決はしないのに、納得させられる内容です。

他に東野さんの学園物には、『同級生』『卒業』『学生街の殺人』

(すべて講談社文庫)などがあります。

同級生 (講談社文庫)

同級生 (講談社文庫)

(『卒業』は主人公が大学生『学生街の殺人』はその続編のような形で
 学園物と必ずしも言えないかも・・)

続きまして、ブレイク作となった『秘密』(文春文庫)。

秘密 (文春文庫)

秘密 (文春文庫)

こちらは99年に広末涼子さんや小林薫さんが出演されて

映画化されましたね。広末さんは、この映画で数々の名誉ある

賞を受賞されました。

ストーリーは、交通事故死してしまった妻の魂が娘に宿り

それに戸惑いながらも娘と生活する主人公なのですが・・

この後は、小説もしくは映画でお楽しみ下さい(笑)

娘の中に妻の姿が見え隠れする辺りが、

とても切なく、胸をぎゅっと掴まれました。

個人的にも大好きな作品です。

この作品と少し類似している作品には『片思い』(文春文庫)が

挙げられると思います。

片想い (文春文庫)

片想い (文春文庫)

こちらは「性同一性障害」がテーマになっており、

体は女性なのに心は男性な美月が焦点になっています。

「全然違う作品!」と怒られるかもしれませんが、

こちらもとても面白く、考えさせられるストーリーですよ。



他にもまだまだ東野さんの作品をご紹介したいのですが、

長くなってしまったので次の日記でも引き続き

東野圭吾さんの特集をしようと思います。

では、またご期待下さい(笑)