花の命は短くて・・・

chiaki50612010-03-01

今日から3月ですね。

ここのところ雨や曇りが多くてすっきりしない天気が続きますね。

徐々に暖かくなってきているのが多少の救いでしょうか。

今日は、先日の週末に本屋さんで見付けた本をご紹介したいと思います。


みなさん、突然ですが「林芙美子」をご存じですか?

こんな質問すると「知ってるに決まってるでしょ!」と怒られそうですね。

でも、知っている人はちょっと辛抱して下さい。

「よく知らない」という人を対象にお話しますね。

林芙美子さんの小説で一番よく知られているのは『放浪記』ではないでしょうか?

放浪記 (新潮文庫)

放浪記 (新潮文庫)

そうです。そうです。

舞台で森光子さんがずっと演じられているあの作品です。

森光子さんの舞台『放浪記』は2000回を超え、国民栄誉賞も受賞されましたね。

ただ、残念なことに森さんにドクターストップがかかってしまったため、

見られなくなるとのことです。

残念ですが、小説を読んで堪能することにいたしましょう(^^)


話が少しそれましたが、そう今回の小説のキーワードは「林芙美子」。

実は「林芙美子」の人生のワンシーンを小説にしたものが

発売されたんですね。

それは桐野夏生さんの『ナニカアル』(新潮社)。

ナニカアル

ナニカアル

これは、林芙美子さんが戦争まっただ中の昭和17年にジャワ(現在のインドネシア

ボルネオ島に陸軍報道部の嘱託になって赴く話なんです。

もちろん小説なので、史実に基づいてはいますが、

林芙美子」がどんな旅をし生活をしたのかはフィクションです。

桐野さんが「「林芙美子」ならこんな風に人生を歩んだはず!」と

豊かな想像力を働かせて描かれているのです。

桐野さんは林芙美子さんの小説がお好きだそうです。

特に『放浪記』と『浮雲』が。

それが創作されるきっかけとモチベーションに繋がったんでしょうね。

林芙美子さんは、48歳という若さで亡くなられています。

直接の死因は心臓麻痺ですが、過労死だったのではないかといわれる方もいます。

林芙美子さんは貧しい生まれで、転々と住むところや職業を変え、

そして、男性も同じようにコロコロと変えていかれたとききます。

彼女は職業作家としてやっていけるようになってから

それまで思う存分できなかった創作や文筆を

もの凄いスピードと精力でこなされたそうです。

おそらく過労で亡くなられたとしたならば、

原因はこのあたりにありそうですね。

「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」

という有名な一節が胸にしみる今日この頃です。


ちなみに、『放浪記』は新潮文庫から出ていますが

これは、林芙美子さんが作家として成功してから随分と加筆されています。

わたしは、彼女が初めに世に認められることとなった

初版本の粗削りな『放浪記』をお勧めします。

現在そちらはみすず書房より刊行されている『放浪記』で読むことができます。

林芙美子 放浪記 (大人の本棚)

林芙美子 放浪記 (大人の本棚)

訃報が続きます・・

chiaki50612010-02-10

立松和平さんが亡くなられましたね。

先日の日記ではサリンジャーさん追悼の日記を書きましたが、

今回も立松和平さんを追悼する日記を書こうかなと思います。

ちょっと悲しいニュースばかり続きますね。

でも、このことがきっかけで立松和平さんの作品に触れてみよう

と思う方が増えればいいなぁと思います。


立松和平さん」と聞いてみなさんが一番印象深いのは

ニュースステーション』でのコメンテーターでのお姿でしょうか。

そうですね、立松さんは作家さんとしての執筆業以外の

お仕事も精力的にこなされていた方ですよね。

著作も小説以外にルポや絵本の翻訳、紀行エッセイなど多岐に渡っていて

立松さんがとても好奇心旺盛な方だったということが垣間見えます。

そんな立松和平さんを大雑把な一言で表すとするならば、

「旅好きの仏教にお詳しい方」

と言えるかもしれません。

旅のエッセイやルポ、仏教の入門書などを多数出版されています。


立松さんの代表作は?と言われると、人によって色々意見があると

思うのですが、『光の雨』(新潮文庫)、『毒-風聞・田中正造』(河出文庫)、

道元禅師』上下巻(東京書籍)ではないでしょうか。

道元禅師〈上〉大宋国の空

道元禅師〈上〉大宋国の空

道元禅師 下

道元禅師 下

(但し上記の三点の内、『道元禅師』を除く他の二点は

現在新刊書店で入手が困難な状態だと思われます。)

光の雨』は浅間山荘事件を題材にした小説なのですが、

盗作された作品だとして問題になりました。

立松さん自身も盗作を認められていることから、この本は絶版になり

今現在は幻の作品となっています。

この作品を代表作に挙げてはいけないのかもしれませんが、

読まれた方からの評判はいいようですね。

『毒-風聞・田中正造』はタイトルが示す通り、日本で初めての公害事件となった

足尾鉱毒事件についての小説です。立松さんはこの小説で毎日出版文化賞を受賞されています。

道元禅師』は立松さんのこれまでのライフワークの集大成ともいえる

作品なのではないでしょうか。

仏教に傾倒し、インドを愛し、旅三昧だった立松さんだからこそ描けた作品だったと思います。

立松さんはこの作品を描くにあたり九年もの月日を費やし

多くの文献に目を通し、何度も取材を重ねられたそうです。

背筋を伸ばしてちゃんと机に座って読みたい作品ですね。


立松さんは著作がとても多いのですべて紹介することはできませんが、

私が個人的に好きな作品が『きもの紀行-染め人織り人を訪ねて』(家の光協会

きもの紀行―染め人織り人を訪ねて

きもの紀行―染め人織り人を訪ねて

です。個人的にきものが好きなので、この本はとても楽しく読めました。

日本の民族衣装「きもの」は辺境で作られていることが多く(特に織りは)

立松さんはその周辺を旅されて、きものを作られている方を取材されるんですね。

今、「きもの」はあまり着られなくなってしまいましたが、

「きもの」を創る文化はずっと残していきたいな、と思いました。

きものに興味がなくても、もの作りの視点から、または紀行文としても楽しめると思いますよ。


享年62歳。

若すぎますよね・・・

【追悼】J.D.サリンジャー

chiaki50612010-02-03

今日は寒いですねぇ。

晴れていますが風が身に沁みます。

さてさて、先日アメリカの作家J.D.サリンジャーさんが亡くなられましたね。

享年91歳でした。

今回は追悼の意を込めてサリンジャーさんの作品をご紹介したいと思います。


ライ麦畑でつかまえて』という作品でご存知の方が多いのではないでしょうか?

この作品は1950年に出版された作品で

今までに全世界で6000万部以上売り上げた作品なのだそうです。

現在でも年に50万部は売れるというから凄いですよね。

そんな驚異的な売上げのある小説なので、改めて紹介しなくてもよいかもしれません。

学校の推薦図書になっていたり、

文学部で英文学科の生徒さんは避けては通れない作品だったりしますよね。

私は、『ライ麦畑でつかまえて』だけでなく、

サリンジャーさんの作品にすべて当てはまるのが、

「純粋さ」だと思うんですね。

うーーん、いい言葉が浮かばないんですが、

「純粋さ」「繊細さ」「脆さ」を足して三で割った感じでしょうか(笑)

主人公が思春期の少年少女が多いので

そう思うのかもしれませんが、

きっとサリンジャーさんはそれぐらいの年齢の頃の

感受性や無垢さにずっと憧れていたんでしょうね。

大人になってからしか、それらを羨望することができないのに・・

若くてその最中にいるときは、そんな中途半端な状態から早く抜け出したくて

必死ですよね(笑)

サリンジャーさんは、大人でありつつもティーンの心を失わずに

自作の作品でみごとに表現した偉大な方なんですよね。


ライ麦畑でつかまえて』は現在日本では野崎孝さん訳と村上春樹さん訳が

出版されています。(どちらも白水社

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

キャッチャー・イン・ザ・ライ

キャッチャー・イン・ザ・ライ

読み比べもいいかもしれませんね。


サリンジャーさんは他にも作品がありまして、『ナイン・ストーリーズ』(新潮文庫

ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

フラニーとゾーイー』(新潮文庫

フラニーとゾーイー (新潮文庫)

フラニーとゾーイー (新潮文庫)

などがあります。

この機会に一度サリンジャーさんの世界を覘いてみるのはいかかでしょうか?

小説持ってピクニック!!

今日はなんだか暖かいですねぇ・・

こうやって春に近づいてゆくのかなぁ(^^)

こんな時は、春を少し先取りしたいもの。

洋服やアクセサリーに春色を取り入れるように

小説にも取り入れちゃいましょう。


そんなわけで(!?)

今回おススメするのは、小川糸さんの小説です。

小川糸さんはご存知の方も多いと思いますが、

Fairlifeのメンバーのお一人で作詞家さんでもいらっしゃいます。

作詞家の時は「春嵐」というお名前で活動されているそうです。

作家デビューは今から10年程前の1999年。

リトルモア』という雑誌で『密葬とカレー』という作品を発表されました。

こちらの作品は単行本になっていないようで、

今現在とても読むのが難しい作品になっていると思います。

私も読んだことがないのですが、「美味しそう」な作品名ですね(笑)

小川さんは、その後も絵本なども執筆され

小説としては、『食堂かたつむり』『蝶々喃々』『ファミりーツリー』(すべてポプラ社

の3作を発表されています。

食堂かたつむり

食堂かたつむり

喋々喃々

喋々喃々

ファミリーツリー

ファミリーツリー


小川糸さんの作品は、どれも「ほんわかと温かい」んです。

作風としては、川上弘美さんや江國香織さんと少し似ているところがあると思います。

小川さんの人柄がそのまま表れた感じのする作風なんですね。

それともう一つ、小川さんの作品に共通しているのが、「食べ物」。

きっと小川さん自身がお料理が好きで上手なんだろうなぁ・・と思わせる

美味しそうな食べ物がたくさんたくさん出てくるんです。

これがとっても素敵。

食堂かたつむり』に出てくる本は、それだけで本にもなっていますので

そちらをチェックしてみるのもいいですね。


わたしが小川さんの作品の中で一番好きなのは『蝶々喃々』。

小説の舞台が根津、入谷で、きものを扱う女の人が登場するっていうだけで

好きになってしまいました(笑)

ストーリーとしては、不倫もの?とも言えるのかもしれませんが

小川さんの筆のタッチで全くそんな印象を与えない作品に仕上がっています。

世の中がどんどん進化してゆくなかで、

主人公の女性のようなアナログ的な生き方をすることは

わたし自身の「夢」なのかもしれません。

パソコンがなくっても携帯がなくっても

美味しいもの作って、好きなものに囲まれて、親しくできる人がいたら

それだけで幸せ!ですよね(笑)

わたしもそんな風に生きてみたいです。


小川糸さんの作品は、筑摩書房の名物編集長さんがテレビで推薦されたことで

よく売れていると聞いています。

ええ、ええ、糸さんの作品を多くの方が読んで癒されて欲しいものです。


食堂かたつむり』は柴咲コウさん主演で映画化され

もうすぐ公開予定ですね。(2月6日より)

こちらも映画を見る前に、原作を是非読んでみて下さいね。

「食べることは生きること。

だから、美味しいものを食べると人生も豊かになる。」

と、私は信じています。

是非、映画共々チェックしてみて下さいね!

本屋さんで面白そうな新刊を見ました(^^)

1月はあっという間に過ぎ去ってゆきますね・・

今週終えると、来週からは2月。

ああ、月日の流れるのは早いこと・・・


「次は何の本をご紹介しようかなぁ」と、

先日本屋さんを覗いてみた時に一つの新刊に出会いました。

今日はその本のご紹介。

先日の日記に「京都に縁のある人気作家さん」について書いたので

当然パート2が次なのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

パート2はまた後日、乞うご期待!!(笑)


話を元にもどしつつ・・

今回ご紹介しようと思うのは、金原ひとみさんの『TRIP TRAP』(角川書店)。

TRIP TRAP  トリップ・トラップ

TRIP TRAP トリップ・トラップ

金原ひとみさんと言えば、綿矢りささんと一緒に

最年少で芥川賞を受賞された方としてご存知の方が多いのではないでしょうか。

そうですね、受賞作は『蛇にピアス』(集英社文庫)。

蛇にピアス (集英社文庫)

蛇にピアス (集英社文庫)

私はこの時初めて「スプリットタン、舌に入れるピアス」というものを知りました。

主人公ルイ(女性)がこのようなものや刺青などで身体を痛めつけてゆく様子が描かれていて

「読むのがとってもハード」と思いつつも

引き込まれて魅了されてしまいました。

若くして芥川賞などに輝くと、色々と言う人がいますが、

私は、金原さんの世界、とても好きです。

冷静な筆で、自身の感情を巧みにコントロールされる才能溢れる方だと思っています。

『ハイドラ』(新潮社)という作品も読んだことがあるのですが、

これも素敵な小説でした。

ハイドラ

ハイドラ

小説の内容としては、摂食障害を持つ女性の話なので、

金原さんの他の作品と同様、ダークで救いようのない話なのですが

その病的な感じが克明に記されているところに引き込まれてしまいました。

怖いものみたさとかそういった感じではなく、

また、ノンフィクション作家さん程の克明さもなく

虚構と現実の狭間のような世界が旨く表現されているんですね。

実は新作の『TRIP TRAP』はまだ読んでいないのですが(笑)

読めることをとても楽しみにしています。

短編集みたいなので、読みやすいのではないでしょうか。

今からワクワクしています。



金原さんは、今回の作品が「ママ」になって初めての作品だそうです。

今まで、家族や家庭のことを描いた話はありませんでしたが、

新作の短編の中には、夫婦のことなど、家族関係の話が始めて登場するようです。

こういった金原さんの心境の変化なども、作品から感じられたらいいなぁと思っています。

京都に縁のある人気作家さん〜パート1〜

前回と前々回は、旅での作家さんとの出会いを書きましたね。

でも、少〜し国語の文学史のお勉強ぽくなってしまったので、

今回は、もっと入りやすい作品をご紹介したいと思います。

(野上さん子規さん、すみません)

私が昔、京都の書店員だった頃にお会いしたことのある二人の作家さんの作品

についてご紹介しましょう。



京都に縁のある作家さんはとても多くいらっしゃいます。

存命の方もお亡くなりになった方も、京都のご出身だったり

京都に住んでいたことがあったり・・・と

京都と何らかの繋がりがある方は大勢おられるんですね。

そんな大勢の中で、今、特に若い方に人気の作家さんと言えば

森見登美彦さんと万城目学さんなのではないでしょうか?

そうです。今回は、このお二人の作品をご紹介したいと思います。

若い方やエンターテイメント小説好きの方にはあえて

今更ご紹介しなくてもよくよくご存知の方が多いと思います。

そんな方は、さらっと流して、森見さんのブログを読んで下さいね。


では、森見登美彦さんの作品から。

森見登美彦さんは、1979年生まれの30歳。

奈良県出身で京都大学農学部に進学された関係で京都に来られました。

デビュー作は『太陽の塔』(新潮文庫

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

森見さんはこの作品で第15回日本ファンタジーノベルズ大賞を受賞されて

作家デビューされたのです。

私はこの作品を製本される前のゲラの段階で頂きました。

京都が舞台で京都の学生さん(当時)だった森見さんの作品を

京都の書店で沢山売っていこう!というコンセプトの元

試読させて頂いたんですね。

読後の第一印象としましては・・

「いや〜面白い!」

でした。

日頃、ファンタジー小説はあまり読まない私ですが、

この小説は素直に面白かったですね。

只、面白いのはいいのですが、書かれた方はもしかすると

「女性にもてない妄想オタク系人物」

なのではないかと思い、一抹の不安を覚えました。(森見さん、ごめんなさい!)

ですから、その後、サイン会でお会いした時に

森見さんの礼儀正しく紳士的な雰囲気に驚いてしまいました。

本当にお世辞ではなく、好感の持てる謙虚な方だったんですね。

妄想炸裂のユーモアーの効いた作品を書かれている方には

とても思えなかった。

いやいや、人の内面は本当に奥が深いものです。

森見さんの作品の最大の魅力は、

独特の文章のリズムとクスッと笑わせてくれるユーモアーだと思います。

一度ハマるとおそらく全作品を読みたくなるのではないでしょうか?

わたしは個人的には『夜は短し歩けよ乙女』(角川文庫)が好きです。

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

森見さんはこの作品で山本周五郎賞を受賞されています。

もう、誰が何と言おうと人気作家さんの一人ですよね。



では、もう一人の作家さん、万城目学さんをご紹介しましょうか。

この方は1976年生まれ、現在32歳。万城目さんも京都大学法学部に進学された関係で

京都にいらっしゃいました。(森見さんと似ていますね)

デビュー作は、『鴨川ホルモー』(現在:角川文庫)

鴨川ホルモー (角川文庫)

鴨川ホルモー (角川文庫)

私は、この作品が単行本で出版された時に

万城目さんとお会いしました。

万城目さんは、わざわざ書店回りをして営業活動をされていたんですね。

私はその時忙しくしていて、ちゃんとお話できなかったのが残念です。

その後も『鴨川ホルモー』は順調に売上げが伸びてゆきました。

2009年には映画化もされ、現在はDVDで鑑賞できます。

山田孝之さんや、栗山千明さんなど、個性的な俳優さんが多数出演されていますね。

万城目さんは、2作目の『鹿男あをによし』(幻冬舎)、

そして昨年出された『プリンセス・トヨトミ』(文藝春秋)で直木賞候補に選ばれています。

鹿男あをによし

鹿男あをによし

プリンセス・トヨトミ

プリンセス・トヨトミ

直木賞を受賞されるのもそう遠くない話になりそうですね。

ちなみに、『鹿男あをによし』は玉木宏さん主演でドラマ化もされ話題を呼びました。

本からだけでなく、映像から万城目さんの作品に入ってみるのもいいかもしれませんね。


以上、京都に縁のある人気作家さんをご紹介しました。

このお二人は、歳が近いことと作風が少し似ていることから

親交があるそうですよ。

お二人の対談なども聞いてみたいものですね(^^)/

旅で出会った作家?〜愛媛県松山市編〜

chiaki50612010-01-20

今日も暖かいですね〜

まるで春のよう・・

今回も先日の日記と同様に旅で出会った作家さんを特集します。


先日の野上弥生子さんと夏目漱石先生つながりで(!?)

正岡子規先生についてお話したいと思います。


正岡子規(本名常規)は1867年に愛媛県松山市で生まれました。

わたくしは、松山市へは旅行で2回遊びに行ったことがあるのですが、

つい半年程前に行った時に子規記念博物館に寄りました。

そこで、正岡子規に出会ったんですね。

「「正岡子規」という名前は学校の時に、憶えさせられたよなぁ・・

確か俳人で、早くに亡くなった人だったっけ。」

という方も多いのではないでしょうか?(笑)(私だけ?)

教科書だと「近現代文学の短詩型文学、特に俳句のそれまでの流れを大きく変えた革命者」

というようなことが書かれているかと思います。

学校の勉強ってどうしてこんなに難しく教えてくれるのでしょうか?(笑)

子規は「技法に拘らず、感じたことをありのまま表現しようよ」と

みなに言い回っていた人なんですね。

大好きな柿を食べて(子規は柿が大好物だったそうで、作品内に多く登場します)

「秋だなぁ」としみじみ感じたり、「病気が進行しているから来年は食べれないかも」と思ったり・・

感受性が豊かで好奇心がとっても旺盛な人だったようです。

結核で34歳と若くして亡くなった子規。

わたしは、「苦悩し続けた夭折の天才俳人」だとずっと思っていたのですが、

子規のことを詳しく調べてゆくと、どうやらそのような暗いイメージは

全く当てはまらないことが分かってきました。

天真爛漫で、思いついたら即行動。

ややおせっかいで、とっても人情深く友達思い。

文学への情熱は人一倍で、野球にも相当惚れ込んだ。

なんだか、とっても明るくておちゃめな感じの人に思えません?

わたしはとても好きになってしまいました。


子規は人にも恵まれた人だったと思います。

親友の夏目漱石を始め、海軍の軍人秋山真之などと交流がありました。

この辺りのことは、司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』(文春文庫)に

詳しく描かれていると思います。(NHKで長期のドラマもしていますね)

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)


では、子規の作品といきましょうか。

このブログは「小説」を紹介してくれるんじゃないの?

と言われちゃいそうですが、まぁ大括りで文芸書をご紹介するということで勘弁して下さい。

子規は俳句と短歌が有名で、それぞれ岩波文庫より出ております。

もちろんそちらもチェックして欲しいのですが、

中々俳句や短歌を味わう気にはなれないという方も多いのではないでしょうか?

そのような方にはエッセイがおススメです。

短歌についてのエッセイは『歌よみに与ふる書』(岩波文庫

闘病記エッセイは『病床六尺』(岩波文庫)『墨汁一滴』(岩波文庫

などがあります。

歌よみに与ふる書 (岩波文庫)

歌よみに与ふる書 (岩波文庫)

病牀六尺 (岩波文庫)

病牀六尺 (岩波文庫)

墨汁一滴 (岩波文庫)

墨汁一滴 (岩波文庫)

こちらのエッセイはユーモアーも効いていて、

より子規を身近に感じられてよいかもしれませんね。


学校の「お勉強」で憶えさせられた人物というと

どうしても堅苦しい印象を覚えますね。

けれども、それら一つ一つを丹念に掘り下げてゆくと

実はそうでもないことが分かりました。

正岡子規先生は、今でいうところの

「お金にはならない『文学』にかまけて、他の勉強はせずに

遊んでばかりいる人」(子規先生すみません!)

だったのではないでしょうか。

結核で吐血しながらも、野球を楽しんでいた方なのです。


これで少しでも子規に興味を持たれた方は

根岸にある子規庵に行ってみるのもいいですね。

また、野球と子規についての関係などを調べてみるのも愉しいですよ。